俳句・短歌 四季 歌集 2020.08.20 歌集「旅のしらべ・四季を詠う」より三首 歌集 旅のしらべ 四季を詠う 【第6回】 松下 正樹 季節に誘われ土地を巡る尊きいのちを三十一字に込める 最北の地で懸命に生きるウトウ、渚を目指していっせいに駆ける子亀……曇りなき目で見つめたいのちの輝きを綴る短歌集を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 花びらのあふれて流るる街川の 水上の桜幾日をふぶかん 満潮に押さるる街川さかしまに 花びら浮かべしづかに流るる びょうびょうと風吹く街の花ふぶき まぶたを閉ぢて歩みあへずも
小説 『再愛なる聖槍[ミステリーの日ピックアップ]』 【新連載】 由野 寿和 クリスマスイヴ、5年前に別れた妻子と遊園地。娘にプレゼントを用意したが、冷め切った元妻から業務連絡のような電話が来て… かつてイエス・キリストは反逆者とされ、ゴルゴダの丘で磔はりつけにされた。その話には続きがある。公開処刑の直後、一人の処刑人が十字架にかけられた男が死んだか確かめるため、自らの持っていた槍で罪人の脇腹を刺した。その際イエス・キリストの血液が目に入り、処刑人の視力は回復したのだという。その槍は『聖(せい)槍(そう)』と呼ばれ、神の血に触れた聖(せい)遺物(いぶつ)として大きく讃えられた。奇跡の逸話(…
小説 『小窓の王』 【第2回】 原 岳 遭難事故報告書と彼の登攀道具をバッグにしまう。彼のことは、ほとんど知らない。彼の葬儀で、少しは聞いたが… 水だけでじゃぶじゃぶと顔を洗い、水滴を滴らせながら歯を磨く。石鹸を頬と口の周りに擦りつけ、目地もヒビもカビが埋め尽くしたタイルと白いウロコだらけの鏡に向かって髭を剃る。剃り終わるとまた顔を洗って石鹸を落とし、ついでに寝ぐせの頭皮まで水をかける。風呂場から出ると鳥肌はいよいよ隆起するがタオルはなく、水を滴らせながら台所に出て流しの取っ手にかかったタオルを取る。据えた醤油の臭いが肌につく。頭にタオル…