エッセイ 人生論 短歌 生き方 2020.07.10 短歌集「生きる」より三首 短歌集 生きる 【第3回】 田中 祐子 心かが折れてしまいそうなとき、 寄り添い支えあう、心の歌。 原爆の悲劇、夫との死別、複数の病との闘い……。時代に翻弄されながらも困難と向き合った歌人が、自らの経験を生きる糧に代え、詠みあげる709首。平和で豊かな未来を願い、いまを生きる人に伝えたいメッセージを、連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 朝よりの小雨も止みてふくらみし桜のつぼみ淡く光れる 気がつけば葉桜となるリハビリを始めし頃は蕾なりしが 五分咲きの桜の枝がどっさりと活けられている店の入り口
小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『ヴァネッサの伝言 故郷』 【第6回】 中條 てい 僕らはやっと外に出られるんだ! そう歓喜した日、村を解放するために戻ってきた兄ガブリエルの姿が神々しく、今も心に焼き付いている 「お前がオージェから乗って帰った馬だが、あれは見るからに老いぼれているから別のをあてがってやってくれとカザルス様からのお言葉だ」先に話がつけてあったとみえて、厩舎の入口付近に三頭の馬が揃えてある。さあどれでも好きなのを選べ、とバルタザールはラフィールに促した。「あいつはおとなしくてよく言うことを聞くんですよ」愛着のある馬を代えろと言われて、ラフィールはちょっと不服だが、せっかくのお言葉だ、ありが…