「いっつもくだらない言いがかりみたいなこと言って。フンなんて拾って捨てたら終わりじゃないのよね」
「ですね」
雪子は小声で頷いた。
「大変でしたね、三島主任。いつもお疲れさまです」
みんなが口々に「お疲れさまです」と声をかけるのにならい、雪子も労をねぎらう。
「まぁ一応、主任だしね。あの爺さん帰り道に事故って死ねばいいのに」
げっそりした顔で呟き、三島が席に戻っていく。雪子は、そんなことは口に出さないほうがいいのにと思った。
「三島さん、大分きてるわね」
明美が雪子に、他人事のように言う。
「みたいですね。大丈夫でしょうか」
「どうでしょう。実は前にもいたのよね。田所さんにやられて、おかしくなっちゃった人」
明美はこっそり囁いて、小さく肩を竦めた。
夜、なんでも「おいしい」と言って食べる伸親が食事をきれいに平らげた後、一緒にテレビを見ていると、最近、流行している葬儀を紹介する番組が始まった。風葬や野葬、中には宇宙葬もあった。
「なんかやだね、こういう番組」
伸親は苦い顔をしながらも、自分ならどう葬ってほしいか語り始めた。
「やめてよ、伸親さん。縁起でもない」
夫が望むだろう返答を与えながら、雪子は内心くだらないと思った。