第一章 あなたの知らないマンションの世界
オキテ7 マンションの多数決は人数が多いだけでは決まらない
マンション管理の世界は「情報の非対称性が大きい」と言われている。非対称性とは何か。
白い紙の真ん中に縦線を引き、線を挟んで左右に円を描いたところを想像してみてほしい。その円の大きさが違うことを「非対称性」という。
マンション管理では、小さい円が管理組合や居住者、大きい円が管理会社やマンション管理士等の専門家となる。つまり、管理会社や専門家の持つ情報量が非常に大きく、格差があることを示している。これでは健全な市場が形成されにくい。
その原因のひとつが、このコトバの特殊性と理解しがたいオキテの存在にある。これらが理解できれば、管理組合や居住者も多くの情報を得ることができるようになるだろう。
次章からは、ショートストーリー仕立てで、私が今まで出会った居住者の人々の生活を再現しながら、今、マンションが抱えている課題について考えてみよう。
第2章 マンション3大トラブル 漏水、騒音、ペット
30年くらい前のことであるが、マンションで発生する居住者間のトラブルの上位3つは、漏水問題、騒音問題、ペット問題であった。これらは「3大トラブル」と呼ばれていた。
訴訟に発展するケースも多く、ちょっと検索すれば判例は山のようにある。中には、同じマンションの居住者同士で三つ巴、四つ巴の訴訟合戦が繰り広げられているマンションもある。
居住者間にトラブルがあると、マンション全体の人間関係がぎくしゃくする。マンションは、住民間の多数決でものごとが決まる。住民同士が戦っていては何も決まらない。訴訟合戦のマンションが住みやすいわけがない。
3大トラブルは、ひとたび発生すると、解決までの時間が長くかかり、多くの人がそのトラブルに巻き込まれてしまう。自分が当事者となる前に、正しい知識を身に付けておきたい。