第5章 建物の老朽化が止まらない

長期修繕計画は絵に描いた餅?

マンションが適切に修繕されるには、長期修繕計画が必要であることは間違いない。ただし、長期修繕計画はあっても、適正な工事費用、周期、金額が反映されていないと絵に描いた餅になる。

また、せっかく計画を立てても、それに見合う積立金を集めなければ、これもまた絵に描いた餅になる。世の中には、「餅の絵が描かれている長期修繕計画」が実に多い。

実際に40年経過したマンションの工事費用と長期修繕計画の工事費用を比較してみると、計画と実績が一致するマンションは皆無だと言っていい。たいていの場合は、実際の工事費用の方が多い。

長期修繕計画には、現状回復工事、つまりもとの姿に戻す工事費用は含まれているが、新しい機能を加える工事費用は含まれていない。また、消費税の増税や、人件費の高騰など予測できない費用は後から追加しない限り含まれていない。

すべての費用を賄おうとすれば、積立金を値上げせざるを得ない。多くのマンションでは、積立金を値上げしたくないがために、最低限ギリギリの計画にしようとする。そして実績がオーバーしてしまう。

オーバーしても支払うことのできるマンションはよいが、払えないマンションもある。この払えないマンションが今、社会問題になっている。

修繕されないマンションは、外壁の落下や耐震性不足などのことがあれば、居住者だけでなく、地域の環境にも悪影響を及ぼす。マンション問題が社会全体の問題になっていると言われるゆえんである。

長期修繕計画が絵に描いた餅になってしまう要因は、長期修繕計画に対するいくつかの誤解があるためだ。