*30年間変わらないという誤解

長期修繕計画は、おおむね30年の期間で作成する。新築マンションとして販売されたときに作成されたものが30年間ずっと使われ続けると思っている人がいる。確かに「30年計画」と書いてあるので、最初に決めた30年の計画がそのまま続くように思うのかもしれない。

写真を拡大 長期修繕計画イメージ
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しかし、長期修繕計画は5年ごとに見直し、常に次の30年を見据えた計画に更新する必要がある。

例えば、5年後には、6年目~35年目までの計画を立てる。10年後は11年目~40年目までの計画を立てる。どんどん塗り替わっていくのだ。

マンションの修繕工事で最も大掛かりな工事が大規模修繕工事と言われる工事である。防水工事や外壁補修など、足場をかけないと実施できないような工事を行う。街中で、垂れ幕のようなもので建物を覆い、工事をしているのを見かけたことがあるだろう。あの工事だ。長期修繕計画では、おおむね15年程度の間隔で計画されている。

新築から15年を経過して、実際に大規模修繕工事を実施するときに、新築時の長期修繕計画の工事金額と異なると「マンション販売時の説明と違う、そんな話は聞いていない!」とか、ましてや積立金を値上げする必要が出てくると「だまされた、その差額は分譲会社に負わせるべきだ!」という話が飛び出すことがある。

しかし、新築時の長期修繕計画は、その金額通りにお金がかかりますよということを分譲会社が約束したものではない。さらに、5年後の見直しのときには、すでにその役割を終えている。

長期修繕計画は、マンションの所有者で定期的に見直しながら修正を加えていくものなのだ。

* 長期修繕計画は見積書のカタマリだという誤解

長期修繕計画の工事金額を見直すときは、建設会社やメーカーから見積書を取っていると思い込んでいる人がいる。長期修繕計画を検討しようとすると、次のような質問が飛び出す。

「何社から相見積もりを取ったのか。減額交渉はゴリゴリやってくれたのか」「20XX年の工事費が高いのではないか。見積明細書を開示してほしい」などである。 しかし、原則としてそんなことはしないのだ。

こうした質問をする人の心理としては、見積書を提出した工事会社と減額交渉をして工事金額が下がれば必要な積立金も下げられる。つまり、自分のお財布から出ていくお金が少なくてすむ、そうした計算があるのだろう。工事金額の根拠について質問攻めにする人は実に多い。

何十年も先の工事の見積書を取って、その工事費用の減額交渉をすることなどナンセンスだ。そんな先の見積書を出してほしいと言われる工事会社も迷惑だろう。その頃になれば景気や物価も変動しているだろうし、新しい工法が開発されているかもしれない。

今から先の工事費用など分からない。長期修繕計画に記載されている工事金額は「めやす」としてとらえよう。減額交渉は実際に工事をする段階でいくらでもできる。

【前回記事を読む】修繕のできないマンションと、日本の年金制度の共通点:あてにしていた次世代の不足

次回更新は2月1日(土)、8時の予定です。

 

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