いや、誰がどう考えても今そんなことよりも、優先しやるべきことがあるはずじゃないのか。

そんな怪しげな健康グッズの話を、私が入院中一樹にまで電話をしていた母に、さすがの一樹も呆れかえっていた。

この出来事がキッカケで、私の両親の残酷な現実を見てしまった。

今は親となった私は、昔よりも二人の言動の理解に苦しんだ。

子どもの前に立っても常に〈自分〉が主観でしか物事を考えないのだと思い知り、漠然とは分かっていたけれど、私は本当に愛されていないのだという思いが確信に変わった。

そのショックは大きく入院中は泣くばかりで終わった。

退院後、私は今まで上辺だけは仲良しこよしだった母とは二度と関わらない、縁を切ろうと決めた。もう大人なのに恥ずかしい話だが、私が一番求めているのは母親からの愛情であることを自覚していたからこそ、これ以上母と関わると壊れてしまうと思った。この件で一樹も、母と関わることは私にとって精神的にいい影響は与えないと思ったそうだ。

私が話をしに行けば、いつものヒステリーを起こし私の言葉を何も聞かず返事も返ってこなくなるに違いない。相手が私ではなく一樹であれば、とりあえずヒステリーを起こしにくいと考え、縁を切りたい旨を話しに行くのは、一樹が行ってくれた。

そうして、あっさりと母と縁を切れたのはよかったのだけれど、私の中で母に対する期待をすべて諦めるという結果になり、その後しばらくは精神的に不安定な時期を過ごした。

もう、母にとって都合のいい娘でい続ける無意味な偽りの親子ごっこは懲り懲りだ。

頭では理解し納得していたが、潔く諦められずにいる部分が、気づかぬうちに私の何かを狂わせた。

気分転換にと、一人で久しぶりに美容院に行った日だった。

カラー剤が馴染むまでの待ち時間、雑誌を読んだりスマホを触ったりしていたら、本当に突然、味わったことのない感覚に襲われた。