「母はなぜ、キリスト教徒になったのでしょうか?」

「癌にかかりイエス様の教えに触れ、信奉されたのだと思います」

「母は、神父さんに何かと相談されていたのでしょうか?」

「話し相手にはなったかもしれません」

「父の話もしたのでしょうか?」

「父上とあなたの話は確かに多かったですね」

「父のどんなことを話してましたか?」

「父上の冒険のような調査研究について、話をされていました。私も個人的に好きな話でしたから」

「神父さんには父の話をしたんですね、僕も聞いてみたかったです。母は父のことを僕には話しませんでした。ところで、父の日誌について母は話をしませんでしたか?」

「お父様の日誌ですか、話をされたことはないと思います」

「そうですか、父の日誌を探しているのですが、どうしても見つかりません」

「見つかるといいですね」

「今度またお時間をいただいて母が話をしていた父の話を聞かせてもらってもよろしいですか?」

「もちろんです」

「よろしくお願いします。また伺います」

お辞儀をして、教会をあとにした。

家に戻ってさらに最近の家計簿をじっくり見てみた。そこでひっかかる項目が見つかる。

宅配を使った項目だ。今まで宅配を使った場合、どこに何を送ったかを記載している。しかし、この項目だけは、送付した伝票しか貼ってない。伝票にはダンボール箱が2個と記されている。父の調査部屋からだった。手が汗ばんできた。しかし、運んだ先の住所も氏名も全く知らない。その住所と名前を手帳に書いて、家を飛び出した。