第一章 母の死と父の面影

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教会はこぢんまりとしていた。中に入ると、祭壇の上にあるステンドグラスが目に飛び込んでくる。それに見とれていると、1人の紳士が近づいてきた。

「あなたはどちら様ですか?」

「すみません。私は竜神健と申します。母は竜神明子と申しまして、こちらの教会に伺っていたと思うのですが……」

「明子さんの息子さんですね。よく明子さんが話をされてました。私は神父をしています住谷修一と申します」と明るい表情に変わる。

住谷という神父は50歳くらいだろうか、白髪が混じったダンディーな雰囲気の方だ。

「良かった……母のことをご存じなのですね。実は、母は2週間前に亡くなりまして、荷物の整理をしている時にこちらの教会のことを知り、来ました」

「明子さん、亡くなられたのですか? 最近、体調が悪いのは存じていましたが、まだ、お若いのに残念です」

「母は、キリスト教徒になっていたんですか?」

「はい、3年前に洗礼を受けて、キリスト教徒になられています」

「全く知りませんでした。何も母は話してくれなかったものですから。もし知っていれば、神父さんにお願いして、教会でお葬式をさせていただいたのですが、申し訳ありません」

「そうですか、それでは今から少し明子さんのためにお祈りをさせていただいてよろしいですか?」

「お願いします」

住谷神父は祭壇に向かって歩いていき、その前で、お祈りを始めた。僕もあわてて祭壇の前に行き、一緒に祈りをささげた。

祈りが終わり、僕はすぐ質問をした。