初めてこれを見た時は、『この白装束は、結婚した時や子どもが生まれた時の晴れ着なのだろうな』と思っていました。しかし、それから数日して、韓国のお祝いの時に着る衣装のことを知る機会がありました。写真の白装束とは違う服でした。

似ていますが、何かが違っていました。両親がいない時を見計らって、こっそり、この写真を抜き出しました。見れば見るほど、なぜだか背筋が寒くなります。写っているのは、兄さんとお父さんとお母さんだというのに……。

そして、両親が、私に真実を話していない気がしてきたのです。

白露兄さんに聞いてみようか、それとも涼兄さんに聞いてみようか、迷いました。そして、当時のことをよりはっきりと覚えているだろう涼兄さんに、こうして手紙を送らせていただきました。

どんなことを知ったとしても、お父さん、お母さんへの接し方を変えるつもりはありません。

私が知りたいのは、父母の出会いのきっかけ、韓国での暮らし、そして涼兄さんの今です。

涼兄さんが家族と距離を置いている理由を、私は今まで気にかけもせず、暮らしてきました。心にフィルターのようなものがあり、『統合失調症がもとで離れて暮らしているのだから、刺激してはいけない、何か聞いたりしてはいけない』。

そう考えていたのです。しかしそれは、涼兄さんのことを心から思う態度ではありません。今では、それがどれほどひどいことだったか反省しています。

私が結婚相手と同居するアパートの住所と、私の携帯電話の番号をお知らせします。

手紙でも、電話でも構いません。少しでも良いので、お父さんお母さんのこと、お兄さんのこと、教えてください。三年以上返信がなければ、お兄さんにとっても話しにくいことなのだと思って、自分の心のうちにしまって生きていきます。

突然の手紙がこんな内容でごめんなさい。でもそれだけ知りたいことなのだと、理解してもらえたら幸いです」

手紙を読み終えて思わず頭を抱えた私の後ろで、電気ケトルのスイッチが切れる音がした。

(今日が休みで、本当によかった)

そんなことを思いながら、私は手紙をテーブルへ置き、電気ケトルの中で沸いた湯を保温用のポットに移し替えた。

それからティースプーンで急須へ緑茶の茶葉を二匙入れ、湯を注いで蓋をする。

緑茶の香りがほのかに部屋に漂う。私は少しだけ落ち着きを取り戻すことができた。

恨めしそうにラファがこっちを見るから、悩んだ末、マグカップへと茶を注ぐ。ラファは途端に嬉しそうにする。茶は減ることもなく冷めてゆく。

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