プロローグ

「ゆるすことかな。見捨てると少し違った」

夏のような濃い青色をした空には、雲が浮かんでいる。草原はどこまでも広がり、湿度のなさが埃っぽさと相まって、ここが日本ではないと感じさせる。それなのに暑くもなければ、寒くもまたない。

音は聞こえず、風は吹かない。

「ここは……」

私の目の前には草原と隣り合う公園があった。小さなブランコがぽつんと置かれただけの、何の変哲もない広々とした公園だ。

つやのある黒い髪を真っすぐに伸ばした少女と、どこか見覚えのある子どもが向かい合っている。

少女はブランコに腰掛けて、見覚えのある子どもはじっと立ち尽くしていた。互いの顔を見つめたまま、二人は涙を流していた。

私は周りをぐるりと見回してから、ああ、と短くため息をついた。彼らの姿はいかにもはっきりとして、見まがうはずもない。それなのに、聞こえくる音や漂ってくる匂いからは、小説の叙述が一部欠落しているかのような違和感がある。

これは、夢だ。眠りに就く私……夏春涼 (なつはるりょう)が見ている、自らに起きた過去の光景。

まだ夢からは覚めず、過去に引き戻される。四歳の私は、少女のいた所から引きずられるように連れていかれた。少女の姿が見えなくなって泣きじゃくる私は、不自然なまでの笑顔を作ってみせた。