過去の件と自覚している私は胸のうちで、ダメだ、と声を上げそうになった。しかし一切は「夢の中の出来事」だ。起きてしまったことを変えることはできない。
ここでどれだけ叫んでみたところで、現に目の前に存在していた過去を改変するなど、初めからできない相談だ。そう思えば、喉の奥が引きつって言葉もない。
一方、夢の中で無邪気に笑う幼年の私は、不思議そうな面持ちで彼女に答えた。
「隣町から来たよ」
すると、女の子が不意に私の右手をつかんだ。
「じゃあ、一緒に遊ぼう!」
彼女の笑顔は、重く垂れ込めた雲の隙間から神々しく差し込む、まばゆい一条の光のように見えた。急に私は何も考えられなくなり、母に「待っていて」と言われたことも忘れて一度だけ頷いた。彼女の喜びは、いよいよ増してゆくようだ。
彼女が草原に走り出そうとしたものだから、私は急いでワンピースのすそを膝までたくしあげた。白い膝があらわになり、みずみずしい草の触感がふくらはぎに新しい。
彼女も、釣られてスカートをたくしあげた。私がしたよりもさらに上の方までたくしあげたから、太ももの全体までもが見えるようになった。
思わず視線を落とせば、女の子が履いている黄色の靴下がパッと目に飛び込んでくる。たちどころに気恥ずかしい思いがし、私は膝より上まで、ワンピースを思い切り持ち上げた。
「よしっ! 行こう」