いざ本人を目の前にすると、蛇に睨まれたカエル状態というか、小さく縮こまっていた。
私が、なかなか話を切り出せずにいると、父から話をし始めた。
何を話していただろうか。うまく思い出せない。
りょうくんは、私の言っていた事実に対ししらを切った態度と言動をしていて、そのショックからか、だんだん父の声も、周りの音さえも何も聞こえなくなっていくような感覚だった。
ただ「薫から聞きたいこと、話したいことはあるか?」と父に言われ、私はハッと我に返り、ここに来て初めてりょうくんを直視し、重い口を開くことができた。「あの日のこと、本当に覚えてないの?」私が知りたいのは、本当にそれだけだ。
そして「覚えてない」という返答を聞いた瞬間、目の前が真っ暗になった。なんだか心が暗く深い穴に一瞬で落っこちてしまった感覚だけしかなく、心ここにあらずといった状態になり、怒ることも問いただす気力さえ湧いてこず、ただただ絶望しかなかった。
その後のことも、よく覚えていない。
でもハッキリと分かったことは、10年もの間私が馬鹿みたいにもがき苦しんできたことを完全に否定され、なかったことにされたという事実だけだ。
その日から、心がどこに行ってしまったのかと思うほど感情が死に、恨むというより、私はなんて無力で、馬鹿なのだろうと思った。やはりただの遊びの延長で、私の受け取り方が悪かっただけの話なのかと……。虚しさと絶望というありきたりな言葉だけれど、その頃はそれしかなかった。
それからしばらく経った頃だろうか。
この10年は馬鹿みたいな勘違いから始まった無意味な一人の闘いだったのだと絶望し、ようやく怒りや憤り、哀しみがいっきに塊となって襲ってきた。
それから、取り憑かれたかのように死ぬことばかり考えるようになった。