「わたしたちの祖先も同じように言われ続けてきたのよ。野蛮で好戦的な人々、彼らの神の教えを理解しない愚劣な民、人間ではなく動物のように扱われてきたの……。わたしたちの伝統も文化も信仰もことごとく破壊されてしまったの」

亜美はその女性の言っていることをよく飲み込めなかった。

「わたしの祖先は、密かにそのことを伝え続けてきました。あなたがたもそうしなければならないの」

「どうしてですか?」

「日本がもし今のままだったら、わたしたちと同じように自尊心や自己肯定感を喪失して、自ら命を絶つ人々が増えるでしょう。そしてやがて溶けてなくなっていくでしょう。

それは命よりも大切なもののために勇気を持って立ち上がった人々を悪として貶めてきた当然の結果なのです。わたしたちの祖先も同じ道を辿りました。

今わたしたちネイティブアメリカンも大切なものを失ってしまいました。だいたいインディアンとかネイティブアメリカンという呼ばれ方自体、わたしは恥ずかしいことだと思っています」

「え、どうしてですか?」

「わたしたちにはそれぞれの部族の名前がありました。この大陸でそれぞれの部族が棲み分け、この大地に生きる自然と動物たちと調和と平和の中、奪い合うことなく、分かち合うことで毎日幸せに暮らしていました」

「そうなのですか?」

「白い人たちにことごとく破壊されてしまったのです」

「ヨーロッパからの移民とアメリカ建国のときのことですか?」

抱きしめてくれていた腕をほどいて、この女性は真っすぐに亜美の瞳を見て話し続けた。

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