太平洋の波の上で ─22年後─
シャーマン
「亜美、あなたと行きたいところがあるのよ、一緒に行こう!」
アリサにそう言われたのは初夏だった。ワシントン州は冬の寒さは厳しいが、その日の気候は最高だった。どのあたりだったか場所ははっきりとは覚えていない。
高い木々に囲まれた道を長い間車で駆け抜けて、辿り着いたのは古代の遺跡を思わせる小高い丘だった。周りは芝と緑に囲まれていて、見渡せる景色が美しかったことだけは記憶に残っている。
以前に参加したことがあるアリサに誘われ、ネイティブアメリカン、いわゆる先住民、白人たちがやってきてアメリカを建国する前から北米に住んでいた人たち、その末裔の儀式に連れていかれたことがあった。
一人の年老いた女性を真ん中に、みんなが輪になって彼女を囲んでいた。何をやっているのかよくわからなかったけど、その女性はとっても深い哀しみに満ちた表情をしていた。
儀式の終盤、参加者が手を繋いで目を閉じた。亜美もそれに倣った。地球の声に耳を傾けるセレモニーのような感じだった。中心にいる年老いた女性が何かを優しく語っていた。
〝地球が痛がっている〟。
その女性はそんなニュアンスのことを言っていた。
そのよくわからない儀式が終わると、その女性は参加者一人一人と言葉を交わしていった。亜美たちもその順番を待っていた。
「よくお越しになりました、ありがとう。あなたはどこから来たの」
女性が手を差し出してきて、握手をした。その手の甲から腕にかけてきれいな青いタトゥーがあった。