時計の針が11時を指した頃、ようやく警察官がやってきた。うつむきながら付いていくとなんと外だ。パトカーが停められている。
「乗りなさい」
不安だ。でも、この心境を伝えることは到底できない。俺は手錠をカシャカシャと動かす。この行動は警察官にとって不快なのだろう。睨(にら)まれているのが分かる。
「さあ、着いたぞ。裁判所だ」
完全に思考が停止した。ここで俺の人生が決まる。
「あ、はい」
「多分そうです」
何を答えているのか、自分でもよく分からない。相当な時間が経ってやっと現実味が湧いてきた。
「す、すみません。俺、有罪でしょうか?」
「先ほどもお話ししましたが、今は勾留延長の手続きをしています」
「勾留延長の手続き、ですか」
急激に恥ずかしさがこみ上げてくる。
「弁護士はどうされますか?」
両親の顔が頭に浮かぶ。
「お金がないのでいりません」
「それでは費用の掛からない国選弁護人への依頼にしますね。貯金はいくらありますか?」
「バイトもしたことないですし、今までのお年玉を貯めた10万円くらいならあると思います」
「それではこの書類を書いてください」
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