第四章 自信を得た高校時代

キャンプファイヤーに未来を描く

私達が登ってきた窪んだ沢を、物凄い勢いで大量の濁流が流れ落ちて行きました。

登る時に助けてくれた岩場の形相は豹変して、牙を剥いたように私達の脅威になっていたのです。またその濁流の深さが、一メートル位はありそうなのです。そこに足を取られたら一気に流され命は無いと思いました。

その濁流ぎりぎりの足場の悪い所を、木の枝や草に必死につかまり一歩一歩足元を確認しながら慎重に下りました。

やっとの思いで麓に着いた時、つい先程の嵐のような豪雨が嘘のように澄んだ青空に戻っていたので、それもまた仰天でした。

先生は皆の無事を確認するのに必死に駆け回っていました。幸い全員無事に下山でき、先生と共に私達もほっとして胸を撫で下ろしたのです。

安心はしたものの、頭の先から靴の中までずぶ濡れです。ポタポタと全身から滴がたれその冷たさとさらに恐怖心も加わり、「ガクガク」としばらく震えが止まりませんでした。

着替えが済むと、皆生き返ったように元気な笑顔に戻りました。尾瀬ケ原の木道を、どこまでも続く浮島の群れを見ながら歩き出しました。

さわやかな風と光のふりそそぐ、広々とした雄大な尾瀬ケ原の中にいると、直前の燧ケ岳下山の恐怖はいつの間にか薄れていき、目の前に広がる美しさを満喫している自分がいました。誰からともなく口ずさむ歌が心地良く聞こえてきます。それは誰もが歌いたかった『夏の思い出』のメロディーです。