その歌声は十七歳の乙女達の大合唱となり、尾瀬ケ原のさわやかな風と共に、どこまでも流れ渡っていきました。
広々とした尾瀬ケ原の前方に至仏山が見えました。青空の下にどっしりと居座っています。そのなだらかなそして温かな膨らみのある山は、どこか癒しを感じさせる母のようでした。
鳩待のキャンプ場に着くと、早速夕ご飯のカレー作りです。みんなで手分けしての炊事は賑やかで楽しい時間でした。
そしてその夜、とても楽しみにしていたキャンプファイヤーがありました。私にとって二回目ですが、去年と今年では、大きな違いがありました。
二年目も形や流れは前年と同様で、イメージしていた通りでした。楽しい歌やゲームも進んで行きます。ところが大きな炎は、前年と少し違って見えたのです。
その炎をじっと見つめていた時です。私は炎の勢いのある力強さに引き込まれ、それでいて温かい優しさに包まれていました。
その炎は、生活の貧しさを抱えて閉ざしていた私の心の扉を広く開け放すように強く激しく燃え、私に迫ってくる勢いでした。
その時頭の中には、空想の夢の世界と現実を交えながら色々な想いがよぎってきました。
「このまま行くと、将来はどうなるのか」
「自分は、どんな人間になるのか」
炎は時間を止めること無く、先へ先へと想いを巡らせ、どんどん自分の世界を広げていきました。高く燃え上がる炎を見つめながら全てを忘れ、大自然の中で自分の事だけを考える時間を得ていました。暗闇の中、一人で別世界に入っていたのでした。