第四章 自信を得た高校時代
ウサギの解剖にいどむ文化祭
私はキャンプ経験を機に自分に自信が付き積極的になっていきました。二年生の秋には、運動会と隔年実施の文化祭がありました。
私は「物化クラブ」でしたが「生物クラブ」と合同で、通常展示していた「カエルの解剖」の他に「ウサギの解剖」も展示したのです。
それは先生の提案でした。麻酔などの事前準備は、先生がほとんどしてくれました。そして、メスを入れる「いざ解剖」と言う時でした。解剖皿の上に、眠っているようにウサギが横になっていました。そのお腹を切り開く少し怖い作業です。
先生に促されても、それを希望する意思表示の手は、誰からも挙がりません。部員の私に促す視線の気配を感じ、私は勇気を出して「やってみます」と申し出ました。
私は小動物の世話をした事が無かったので、生き物への愛着が少し鈍かったのかも知れません。
それでも、台の上に麻酔で動かなくなったウサギにメスを入れ、お腹を開いていくのはさすがに手が震えました。最初見ていた友達も一人、二人と手を貸し、最後は全員で作業に当たりました。
解剖の後は展示台に針で固定し、展示準備完了です。カエルでは分からない内臓の形や配置など、分かり易い図を添えて展示の工夫をしました。
見学者は驚いたり感動したりで好評でした。その様子を見て、実験台になったウサギへの罪の意識が少し軽くなった気がしました。
二日目には、男子校からも、たくさんの見学者が来て、その年の文化祭の理科室の中は、混雑とざわめく声で大騒ぎでした。女子高にしては、多分稀なウサギの解剖と言う貴重な経験をした忘れられない文化祭が成功裏に終わりました。
緊張の紐が緩む時
私は中学生の頃から、学校の帰り道に坂の上に立ち止まり、坂下の広々とした景色を眺めるのが好きでした。その坂道は、すぐ下に麦藁屋根の我が家が見えるいつも通っている近道でした。
坂の上からの眺めは、背中に受けた夕日に照らされ、全体がオレンジ色に見えました。遠くに八溝山の山並みが連なり、その麓を那珂川が大きく蛇行し、悠々と流れています。