「よし。これ、申込み決定~!」

信長さまがいた場所へ、やっと行ける。ひとりウキウキ気分で近江八幡の地へ、想いを馳せる結迦だった。

冬の米原って、雪が降っていなかったっけ? 結迦は子どもの頃、新幹線の窓から見えた冬の景色を思い出していた。寒いのかな。でも、真冬ってわけではないから、きっと大丈夫かな。軽いトレッキングのようなハイキングコースらしいことが、パンフレットに記載されていた。山登りにふさわしい恰好ということは、靴を新調したほうがよさそうだと結迦は思った。

バスツアーを申し込んだ後に、新幹線と前泊するホテルの予約も早々に済ませることにした。おっと。新幹線の予約は乗車の一か月前からだから、スケジュール帳に予約日をメモしておかなきゃ。忘れっぽい結迦は、怠りなくメモした。どうやらバスツアーの申込み者数は、難なく最少催行人数を超えたようで、結迦はほっと胸をなでおろした。

「信長さま~、会いに行きますよ!」

ついに、その日はやってきた。前泊のため、結迦は米原へと旅立つ。

とっくに陽は落ち、暗い夜道をホテルへと向かう。そこは、静かな街並みだった。通りを歩く人の姿も少ない。コートのポケットに手を入れ、温かい缶コーヒーをカイロ代わりにしていた。「静かだなあ」そう思いながら、結迦はふと、空を見上げた。星空に、まあるいお月さまがきれいに見えていた。

てきぱきとホテルのチェックインを済ませ、部屋へ入る。窓のカーテンを開け、外の景色を確認する。夜景を期待していたわけではなかったが、静かな場所には違いないことに、ほっとしていた。真夜中に近い時間だもの、出歩く人も少ないだろう。明日の集合時間に遅れないように、とっとと寝るに限るねと、バスタブにお湯を溜め始めた。