「東京から来ました安藤夏子と申します。よろしくお願い致します」

そう言って、少しはにかんだような感じで、軽くお辞儀をした彼女の髪が、フワッと舞ったように見えた。

色白……といっても、〝透き通る〟と言った方が適当なほどの色白。少し茶色がかった髪の毛は肩より少し下あたりまで、まっすぐに落ちている。かなり柔らかそう……。

お辞儀の姿勢から身体を起こした時、もう一度、ザワメキめいたものが教室を支配した。これも無理もない。パッと見ただけでも、あれほどの美形は、たぶん、僕の住んでいた町では見かけないくらいだったのだから。

そのような教室の生徒の反応など無視するかのように、担任は、ここでも、ただ淡々と事務的に言った。

「じゃあ……」

そう言いながら教室を見渡した。事前に情報提供してきた友人の小野は、また僕の方を向いてニタニタしている。彼が言いたいことはわかっていた。そして、僕が何を期待していたのかもお見通しといった感じだった。

「……あそこ……一番後ろだが、今はそこに座ってもらおうか」

担任は、僕の方……つまりは、僕の隣の空席を指さして言った。それから、自分の名前を呼んだ。