M: 病態って言われると身構えちゃいますよね。糖尿病を簡潔に一文表現すると、インスリンの働きが悪くて血糖値が高くなる病気です。質問ですが、私たちの体に血糖値を下げるホルモンはいくつあるんでしたっけ?
A: え~確か、インスリン1つだけ……です。
M: よく覚えていましたね。血糖値を下げるホルモンはインスリンしかないので、インスリンがきちんと働かないと血糖値は下がりません。ちなみに“インスリンの働きが悪い”は、専門的には“インスリンの作用不足”と表現します。
A: インスリンの作用不足で血糖値が高くなる……。何となくイメージできてきました。そういえば、私のおじさんが糖尿病なのですが、血糖値が高くても症状がないので、ついつい甘いものを食べてしまうって話していました。糖尿病って無症状なのですか?
M: とても良い質問です。幸か不幸か、血糖値が高くてもほぼ無症状なんです。そのため糖尿病は症状がないのが症状と表現されます。糖尿病の症状は、血糖値は300mg/dlくらいまではあまり出ないのですが、400mg/dlくらいになるとすごく喉が渇いて飲み物をたくさん飲んだり、頻回におしっこに行ったりといった症状が出ます。
A: 全くの無症状というわけではないのですね。
M: かなり高血糖にならないと症状は出ないので、ほぼ無症状と言ってもよいでしょう。この“ほぼ無症状”というのが曲者で、「健診で血糖値が高いといわれているけど、体の調子は良いので病院には行ってない」という人が結構います。実在する糖尿病の人の半分くらいしか医療機関を受診していないというデータもあります。
A: 確かに、症状がないと病院には行かないかも……。
M: 症状がなくても、高血糖を数年放置していると知らないうちに合併症が進んでいきます。例えば「急に目が見えなくなって眼科に行ったら、ひどい糖尿病性網膜症で失明寸前」いうケースもあります。しかし、後悔先に立たず。進行した合併症は、完全に元に戻すことはできません。
A: 合併症、元に戻せないんですか!
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