四十二 し 3652
志賀の海人の 一日(ひとひ)もおちず 焼く塩の 辛き恋をも 我(あれ)はするかも
遣新羅使人等
【訳】 志賀島の海人が一日も欠かさずに焼く塩の辛さのように、辛く苦しい恋を私はしていることか
【注】
1 遣新羅使人が大和を望み悲しんで作った歌
2 志賀=福岡市の志賀島。上3句は序。「辛き」を起こす
四十三 し 34
白波の 浜松が枝の 手向(たむけ)くさ 幾代(いくよ)までにか 年の経ぬらむ
川島皇子(かわしまのみこ)
【訳】 白波打ち寄せる浜辺の松の枝に結ばれた、手向けの幣は、もうどのくらいの年月が経ったのだろう
【注】
1 川島皇子=天智天皇の第2皇子。莫逆(ばくぎゃく)(=意気投合して極めて親密な間柄)の友・大津皇子の謀反を朝廷に告げた
2 浜松=有間皇子(孝徳天皇の皇子。斉明天皇に対し反乱計画、失敗して藤白坂で絞殺された)にゆかりの岩代の浜松
3 手向けくさ=旅の安全を祈って道の神に捧げた幣帛(へいはく)