シニア世代のための「万葉集百人一首」
三十四 こ 348
この世にし 楽しくあらば 来む世には
虫に鳥にも 我はなりなむ
大伴旅人
訳 この世で楽しく酒を飲んで暮らせるなら、来世には虫にも鳥にも私はなってしまおう
【注】1 この世=現世、来世の対
【注】2 古代語の「楽し」は飲酒の場に集中して用いられるという指摘がある
【注】3 仏典には、悪行によって鳥や虫に化する報いを受けることをいう
【注】4 「虫に鳥にも」=七音句にするため「虫にも」のモを略している
三十五 こ 560
恋ひ死なむ 後(のち)は何せむ 生ける日の
ためこそ妹(いも)を 見まく欲(ほ)りすれ
太宰大監大伴宿祢百代(だざいのだいげんおほとものすくねももよ)
訳 恋い死にしてしまったら何の意味があろうか。生きている今日のためにこそ、あなたを見たいと思うのだ
【注】生ける日=生きている日々