三十八 さ 33

楽浪(ささなみ)の 国つ御神(みかみ)の うらさびて

荒れたる京(みやこ) 見れば悲しも

高市黒人

訳 近江朝の地を支配し給う国つ神の心がすさんで、荒れた都をみるのは悲しい


【注】1 高市黒人=持統・文武朝の歌人

【注】2 国つ御神=その土地を支配する神

【注】3 うらさびて=心がすさんで。荒廃の理由を国つ神に求めた

三十九 さ 4425

防人に 行(ゆ)くは誰(た)が背(せ)と 問ふ人を

見るがともしさ 物思ひもせず

昔年(さきつとし)(=往年)の防人の歌。

訳 防人として行くのは誰の夫なの、と尋ねる人をみると羨ましい。何の物思いもせずに


【注】物思ひもせず=その人は何の物思いもせんどいて。尋ねる人への批判

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