四十四 し 3400
信濃(しなぬ)なる 千曲(ちぐま)の川の 小石(さざれし)も 君し踏みてば 玉と拾はむ
作者未詳
【訳】 信濃の千曲川の小石もあなたが踏んだのなら、玉と思って拾いましょう
【注】小石=さざれ石の転
四十五 し 3862
志賀(しか)の山 いたくな伐(き)りそ 荒雄(あらを)らが よすかの山と 見つつ偲はむ
筑前の国(つくしのみちのくち)の志賀の白水郎(あま)の妻子
【訳】 志賀島の山の木はひどくは切らないでくれ。荒雄のゆかりの山として見ながら偲んでいきたい
【注】
1 よすかの山=思い出すきっかけとなる山。よすか=由縁の意。荒雄在りし時のままの山の姿を見続けていたいという心情
2 見つつ偲はむ=不帰の客となった人への思慕
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