「長瀬。明日から新人が入るから、よろしくな」

沖田さんに言われた。フロアチーフの立場だった僕は、わずかばかりの時給の高さで、新人の教育とフロアのシフトを組むことを任されていた。

「学生ですか」

「いやフリーだ。シフトはいつでも入れると言っていた。女の子だ。可愛いぞ」

沖田さんの口元が緩んだ。

学生かどうか尋ねたのは、学生は試験休みが重なるため、その間のシフトのやり繰りに頭を悩まさなければならなかったからだ。シフトを組む僕には、フリータイムで働いてくれる人は貴重でありがたかった。

翌日、「こちら長瀬チーフ」そう紹介され、振り向き僕は息を呑んだ。沙耶伽だった。沖田さんが言った通り、綺麗で洗練された僕の知らない沙耶伽がそこに立っていた。

優しくウェーブされた髪が肩にかかり、子供の頃のショートではなくなっていた。小ぶりだった身長は僕の肩ほどまでになり、細身ながら大人の女性に変貌していた。唖然としている僕を、沖田さんはからかった。

「どうした。美人で驚いたか」

「あ、はぁ。まぁ」

しどろもどろの僕に、「杉浦です。よろしくお願いします」と彼女は頭を下げた。突然の再会に僕は戸惑った。

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