試合の次の土曜日に、久々にマコトのおかげでカホの店に集まった僕たちは、楽しかった。熱々のもんじゃ焼きとジュースでマコトの優勝をお祝いしたのだ。
それぞれ部活とかで忙しいけれど、昔と変わらないなと思ったものだ。カホはお祝いだからと言って、もんじゃ焼きだけでなく、いろんな食べ物を出してくれた。
「幸せだねぇ、マコトは。カホからこんなにお祝いしてもらっちゃってさ」とユーがマコトに言っていたが僕も本当にそうだなと思った。
ユーがカホにラブレターを送ったのは次の年のことだった。最後の中学生活で、いよいよ来年の高校ではみんながバラバラになるぞという時だった。
「やっちゃった、やっちゃった」
学校で僕とマコトが話しているところにユーが眼鏡も落ちるかという勢いで駆けて伝えてきた。僕もマコトもユーも、みんなカホが好きだったと思うけれども、小さいときから知っているだけに、それまでは誰もなぜかそれを言い出せなかったのだ。
ユーがカホにラブレターを出したと言ったときは、僕もマコトも顔を見合わせた。
「そう、出しちゃったの?……撃沈されないことを祈るよ」とすまして僕はユーに言った。マコトは正直に「ちくしょう、先を越されたか」と言っていたが、僕もマコトも表面上はユーの成功を祝うということになっていた。
その日、僕は眠れなかった。ユーがカホにラブレターを出したというだけで、なんで、こんなに気持ちが落ち着かないのだろうと思った。何度も寝返りをうっては、カホの笑顔が浮かんでは消えた。
カホから相談があると学校で言われたときは、嫌な気がした。ユーのラブレターにどう答えるかということを僕は聞きたくはなかった。
それでも気持ちだけは突っ張って、「分かった。カホの相談じゃあ聞かなくちゃな。じゃあ、学校の帰りに店に寄るよ」と僕はカホに言ったのだが、カホは店ではなく僕の家の近くの隅田公園の池の辺りで待ってるからと言った。
ますます僕は嫌な気がした。
「そこってデートするところだろ?」
カホは僕の冗談には笑わずに先に行って待っているからと言って僕のそばを離れた。
隅田公園は隅田川を挟んで浅草側と向島側にあった。
桜が咲く頃は、どこもかしこも人だらけで落ち着かないが、同時にみんなで花見をした思い出がたくさん残っている。
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