「これからも、ちょくちょく会おうぜ、なあ知」「二人にこれからも会いたいわ」
「そうしよう、そうしよう、俺も二人に会いたいよ」
三人のおだやかでやさしく懐かしい時間は、夜の帳(とばり)が下りるころまで続いた。
二人を見送った知之は、「なにをクヨクヨ、わからん先のことを思い煩う?」思わず口走っていた。前が向けそうに感じる知之は、その夜久しぶりに熟睡した。
お洒落なフレンチレストランで、食事をしているお似合いのカップルがいる。
聡一郎と史である。
「素敵なお店ね」
「念願かなったこの日だ。気に入ってくれて嬉しいよ」
聡一郎も史も赤ワインが好みだ。グラス三杯くらい飲んだだろうか。いつになく顔にほてりを感じてとまどう史。でも心地よい。
「池田さん、付き合っている人いますか?」また直球が飛んできた。
「……いるにはいるけど……」
「いるにはいるけど?」
「最近は余り会えてないの」
「いるんだね。当然だな。池田さんのような人を放っておくわけがない!」
史はちょっと言い過ぎよと思いながら、内心まんざらでもない気持ちになった。付き合っている人がいると答えたから、もうこれでおしまいかもしれないと
思ったその時、また直球が飛んできた。
「池田さん、僕と付き合ってください」
史はすぐに返事ができないでいる。知之の顔が浮かんだからだ。その頃の史は、知之と会えないでいた。
〈知之と会えない寂しさを紛らわせたいから聡一郎と付き合う? そんなことをしていいの? でも聡一郎と過ごす時間はとても楽しい! このまま聡一郎と会えなくなったら、悲しい〉
史の頭の中を、聡一郎と知之への気持ちがぐるぐると回った。史は、深く息をして目をつぶった。そして意を決した。