第二章 聖地の風に吹かれて
プジャを求めて
しかし、私の心はプジャのことでいっぱい。「アイム・ベリー・ビズィー」と冷たく言い放って、他のゴンパへと急いだ。
プジャを求めて、さらにいくつかのゴンパを足早に回った。しかし、音楽が聴こえるゴンパには出合えない。
こんなことなら、さっき唯一音楽を奏でていたゴンパで、もっとゆっくり楽器でも見ればよかったと後悔した。とはいえ、引き返す元気もない。結局その後は、どこからも音楽は聴こえず、がっかりしながらストゥーパに引き返した。
すると、さっき出会った少年が「ドゥー・ユー・ライク・プジャ?」と話しかけてきた。
「えっ?」
私たちの会話を聞いていたのだろうか。驚いて、すぐさま「アイ・ライク・プジャ!」と答えると、嬉しそうに笑った。
「ワッツ・ユア・ネーム?」と聞いてくるので「ユウコ」と教えると、「ユウコ」と正しい発音で呼んでくれた。
少年の名前は「ムナ」。山という意味があるという。お互いに名前を呼び合うと、仲よしになった気分だ。すると、ムナ君が「トゥデイズナイト、プジャ」と言って、今夜プジャの演奏があることを教えてくれたのだ。
「本当に?」
その場でガイドブックを開いてみると、確かにネパール暦の一〇日、一五日、二五日の夜に礼拝があると書いてある。行われる場所を尋ねると、ムナ君は実際そのゴンパに連れて行ってくれた。ストゥーパから近かった。
まだ半信半疑だったので、近くにいた大人に聞いてみたところ、夕方六時頃からあるという。これはビッグニュースだ!
あまりに嬉しかったので、プジャの情報へのお礼として、ムナ君に粉ミルク一袋をプレゼントした。そして、この出会いを忘れたくないと思い、ムナ君の写真を撮らせてもらった。
照れくさそうな表情だったが、別れるときは嬉しそうににっこり笑って去っていった。
夕方六時まで待つことになった私たちは、ストゥーパの周りにある喫茶店の二階席に座り、人間ウォッチングを楽しみながら過ごした。いよいよプジャの時刻。
教えてもらったゴンパの前に行くと、そこには思いがけない事態が待っていた。