「農学部だよね?」
急に僕に声をかけられたその子は、最初はキョトンとしていた。
「うん……そうやけど」
「オレも。学科は別なんだけど」
「ああ、見たことある。なんか背の高い人達と一緒いるよね」
「う、うん。新一郎と隆志。友達なんだ」
「なんか結構目立っとるよね。そっちのグループ」
やっぱり、僕たちのグループは他の学科の可愛い子達も知ってるくらい農学部では目立ってたんだ。そう思うと、少し調子に乗れた。
「そう? まあ、ちょっとうるさくしちゃってるかもだけど……」
「うちらもこの前うるさいって講義中に怒られたから、おあいこだよ」
「へぇー、サークルとか入ってんの?」
「うちはサーフィン部、入っとる」
「サーフィン?」
サーフィン部のギャルというのに少し尻込みしたが、ここでナメられるわけにはいかない。僕がナメられたら、グループごとナメられる可能性だってある。僕はもう学科の代表なんだ。
「いいやん、サーフィン。あっ、そうだ。こ、今度みんなでコンパしない? オレも学科の友達、紹介したいし」
女の子なんて慣れてる感じで、童貞だって絶対にバレないように、自然に、自然に誘う。でもまずい、少し目が泳いだかもしれない。声が上擦ったかもしれない。その子は少し考えると、ニコッと笑ってこっちを見た。
【前回の記事を読む】イキった髪形に、イキった発言。「……いやオレん家、農家なんやけど」と思わぬ返答をくらい...
次回更新は11月20日(水)、11時の予定です。