僕の大学デビュー天下取り物語
最初に新一郎を仲間にできたのは、僕の大学天下取り計画では良い足掛かりだった。オシャレで身長の高い新一郎が仲間にいるだけで、グループのセンスが5上がった。
僕は自分の大学デビューがバレないように、新一郎のペースに合わせて喋った。新一郎が大学に入るまでにやっていたヤンチャなことも、あたかも自分も経験したことがあるかのように相槌を打った。
女の子の話になったとき、新一郎がドキっとすることを聞いてきた。
「しゅんってさ、童貞じゃないよね?」
なんて言おうかと一瞬迷ったが、横には村崎もいる。ここで嘘をついて、後でバレた方がヤバい。僕は瞬時にそう考えた。
「実は童貞なんだよなーまあ機会がなかったことはないんだけど……」
「マジで! じゃあ合コンしようや、合コン!」
「お、おお! 頼むわ! 童貞捨てさせてくれー」
女の子関係は新一郎にマウントを取らせた方が良さそうだ。そっちの方が後々困らない。新一郎が入学前に、すでにモバゲーで連絡をとっていた看護科の女の子と合コンするという話になったところで、僕らは昼からの講義に向かった。
教室に入ると、すでに僕ら以外にも何個かグループができていた。しかし、おそらく今の時点で一番派手なグループは七色ヘアーの僕とオシャレな新一郎がいるこのグループだ。
村崎と新一郎を二人掛けの席に座らせて、僕は一つ空いてる席に座った。僕がこの天下取り計画でもう一人、なんとしても仲間に加えておきたい人物、隆志の隣だ。
隆志は入学式のときから目立っていた。左耳に大きなピアス、清潔感のあるソフトモヒカン、甘いマスク。そしてガタイが良い。絶対ケンカ強いだろうっていう体格の持ち主だ。こいつがグループにいると、もし他のグループから因縁をつけられても、絶対倒してくれそうだ。
大学生だろ? 国立の?
因縁つけるとかないだろ、中学生じゃないんだし。ケンカ強そうってなんだよ。
と、今になっては思うこともあるが、当時の僕は本気で思ってた。隆志はケンカ強そうだから絶対仲間に入れたい。
まったく興味のない稲の刈り取り機の流通がどうとかの講義が始まった。
僕は小声で隆志に話しかけた。
「この講義さ、今後の人生で全く必要ないよな?」
「……いやオレん家、農家なんやけど」
ヤバい、地雷を踏んだ。
「ああ、じゃあ必要かもな。すまん」
「……」
スタートダッシュというのは肝心だ。僕はただでさえ、一見汚い茶髪だが、美容師曰く角度によっては七色に見えるというイキった髪型をしている。これで最初になんか調子乗ってるヤツとして煙たがられてしまうと、今後どんどんボロが出てしまう。
あんな感じだけど喋ってみたら人当たりの良い面白いヤツでいなきゃいけないのだ。敵は作っちゃいけない。
打開策の見つからないまま講義が終わる。席を立つ隆志に僕は咄嗟に声をかける。