僕の大学デビュー天下取り物語
イジメられていたワケでもないし、一瞬彼女もできたりして、人並みの青春は送っていた。だけど、心の中にはいつもあった。
「オレはこんなもんじゃない。オレはもっと目立ちたい。目立つべき人間なんだ」
なぜ、自分にこんな自信があったのかは分からないが、
とにかく僕は自分のことは「普通とは違う面白い発想を持った凄いヤツ」なのだと思い込んでいた。
自己顕示欲とか承認欲求というものが、思春期の力で常に膨れ上がり、破裂しそうだった。
授業中に何度も妄想した。今、テロリストが急に教室に入ってきて、みんながパニックの中、僕だけが冷静にテロリストを倒す。そして学校の人気者になるという妄想だ。学校で可愛いといわれてるあの子もあの子もみんな言い寄ってくる。
でも現実は、僕が学校一可愛いと思ってた瑞穂ちゃんもサッカー部のエースと付き合ったてたし、うちの高校で唯一のギャルだった彩菜ちゃんはやっぱり他校のヤンキーと付き合っていた。
ある日、クラスの一軍のヤツが、なぜかこんな僕のことを面白いと言ってくれたのを皮切りに、僕は突然一軍に入ることができた。
でも、それは高校生活の後半。遅すぎた。
僕は前半、四軍のヤツと一緒に飯を食って帰る生活をしていたのだ。
そして後半になれば、学校の大きなイベントも終えて受験のためにみんな遊びどころじゃない。遅すぎたのだ。
僕はまた決めた。絶対大学デビューをかまそう。大学はもうはっちゃけまくって、華の生活を送るんだ。変にカッコつけたりとかそういうプライドも捨てよう。とにかく何が何でも、何としても大学では一軍のトップになるんだ。
早い段階から大学デビューについて考えた。多分、大学生に必要なのはノリの良さとセンスだ。ある程度頭の良いところに行けば、ヤンキーなんていないだろうし、運動部が必然的に大活躍する全員強制参加の体育祭なんてイベントはない。
ノリが良くてちょっと面白いことも言えて、誰にもバカにされないくらいの服のセンスがあればこんな僕でも一軍になれるはずだ。
自由に登校できる大学は、中学・高校ほどのスクールカーストは生まれないだろうが、それでも明確に目立っているグループとそうじゃないグループには分かれる。
絶対に目立っているグループに入り、なんならその中でも中心人物になって、華の大学生活を送らないといけない。
僕の家はそんなに裕福ではなく、国公立の大学しか行かせるお金はないと言われていたが、それは逆に好都合だった。慶応だとか明治とか東京のイケイケの私立なんかでは北九州の童貞田舎者の僕が大学デビューを果たすのはかなり難しいだろう。
トップレベルの場所じゃないなら、国立大に入れる学力はあった。国立大で目立てそうなところはどこだろうと考えていた。
そんなとき、宮崎が今注目されてることを知った。東国原英夫が知事になって。宮崎をどげんかせんといかんという流行語も産まれていた。
宮崎か、南国は開放的な気分になれそうだし、可愛い子も多いと聞いたこともある。
都会で埋もれて大学デビューに失敗するくらいなら、逆にもっと田舎に行ってそこで目立っていた方がモテるかもしれない。