顎がしゃくれた子二人に挟まれた僕が、オセロ方式で自分の顎までしゃくれてしまったという話だけで朝まで笑い合った。大学生なんてそんなもんだ。今考えればとても失礼だけど。
そして、四月の後半。一大イベントがあった。新歓コンパだ。農学部の学科ごとに二、三年の先輩達が毎年行っているイベントだ。F4結成のおかげで勢いに乗ってる僕は賭けに出た。
自己紹介でギャグをしようと。これで自分の地位を確固たる物にしたかったのだ。今まではプライドがあってできなかった。勇気もなかった。全校生徒の前でギャグをする村崎を冷ややかな目で見てた。
でも今は違う。プライドなんてとうに捨てた。全てはこの大学で成り上がるためだ。結論から言うと、当日、僕はゆってぃのモノマネ一発で天下を獲った。細かい流れは覚えてないが、自己紹介の前、誰かがお酒をこぼしたときに、「小さいことは気にしなーい。それワカチコ、ワカチコ」というゆってぃの流行ってたギャグを全力でパクったのだ。そう、全力で。
プライドを捨ててキレキレの動きで全力でやったからか、宮崎がそもそもテレビのチャンネルが二つしかないようなお笑いの文化があまり根付いてない田舎だったからか、これがウケた。
「来年からの新歓はもうお前に任せるわ。代表はお前な」
先輩が笑いながら、そう言ってきた。普通大学三年生が代表を務めるこのサークルで、一年生の僕が代表になるのは初めてのことらしい。そこから僕は芸人のギャグとかをパクりまくって、とにかくその新歓コンパを盛り上げた。新歓コンパが終わり、すでに農学部でも肩を切って歩くようになったとき、ある女の子のグループと仲良くなった。
農学部で一番可愛いと言われてる一軍女子グループだ。可愛い子は可愛い子とつるむというが、見事に農学部の可愛い子がそのグループに集まっていた。
その一軍女子グループの一人と、僕は自動車教習所が一緒だった。少し色黒で目がクリっとしていて茶髪で、国立大にはあまりいそうにないギャルみたいな子だった。帰りのバスでその子とたまたま席が隣になった僕は、今乗ってる勢いのままその子に話しかけた。