その後、2018年3月12日にCFIUSによる最も攻撃的な運用の1つと言えそうなケースが起こり、ホワイトハウスがシンガポールのブロードコムによるアメリカ半導体大企業クアルコムに対する敵対的1,170億ドルの買収にストップをかけた。
この行為は2つの点で通常のことだった。これは敵対的買収であったことから、CFIUSが考慮すべき、売り手と買い手との間で、原則として契約がないため、条件緩和のために活動する余地が最初からない。
そしてアメリカ財務省の発表では、この取引を退けた理由は「重要な箇所において……極秘扱いになっている」とし、シンガポールのブロードコムのベースは主として中国と推定される『第三者外国資本』の支配下にある旨に言及した。
今やトランプ政権はCFIUSを武器としたので、アメリカと中国間で急激に大きくなっている貿易戦争と金融戦争において最前線で武器として使われている。
これはCFIUSがウラニウム・ワンの事件の頃に押しやられた屈辱的な立場とは大違いである。
2018年8月13日トランプ大統領はCFIUSの役割を強化し、以前からの海外からの直接投資に対する国境開放政策から転換し、国家安全保障に重点をおけるような新法案に署名した。
この新法案はFIRRMA(外国資本投資リスクレビューの現代化法案)といい、共和党の上院議員ジョン・コーンニンと民主党の上院議員のダイアン・ファィンスタインが共同で提出して成立した。
FIRRMAはCFIUSの承認を必要とする取引タイプを大幅に拡大し、レビューされるべき範ちゅうを、例えば、「重要な材料」や「新しく登場した技術」など新たに増加させた。
FIRRMAは「証明済み諸国」の優良国リストを作成し、相互防衛条約締結諸国を含むアメリカと友好な関係国は厳しい調査の対象としないことにした。
これは皮肉なことに、特攻大作戦部隊をCFIUSに導入した時の分析的アプローチをより厳格に、かつ法律の強制力をもって実施するだけのことだった。
このアプローチはCFIUSがウラニウム・ワンを承認した時には横に捨て置かれていた。
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次回更新は11月6日(水)、8時の予定です。