「はい、犯行時刻と合わせてみても、この男が被疑者で間違いありません」有田が答える。
「ということは、ホシはうちの管内に居住しているってことか?」「今、この容疑者の住居を洗っているところですが、こいつがホシで決まりです」手塚が得意げに語る。
「よくやった! では捜査一課に報告して体制を組むぞ。連続強盗事件となると一課が黙っていない。加藤係長! 一課に報告して捜査本部の立ち上げを依頼してくれ。私は署長に報告してくる」
佐伯が加藤に声をかけたが、加藤はデスクに座ったまま腕を組んで微動だにしなかった。
「加藤係長! 聞いているのか!」
「聞いてるよ。朝からギャアギャアうるせえな。まだこいつがホシと決まったわけじゃねぇんだから、そんなに色めき立つことねぇだろうが」加藤は佐伯の顔を見ようともしない。
「ホシかどうかはこれから裏付け捜査をやればわかることだ。それこそお前の仕事だろ。いいから一課には連絡しておけ。わかったな!」
「ったく、そんなに本部に媚を売ってまで手柄が欲しいのかね」加藤は立ち上がって刑事課を出て行った。
「課長、大丈夫ですよ。加藤はああ見えても仕事はきっちりやる男ですから」城島が加藤をフォローする。
「そうだといいがな。容疑者の住居確認と各種照会を至急だ。被害者は確かホシの顔を見ているはずだから、容疑者の写真があれば被害者に見せて確認させろ」
「了解。課長、南署には連絡しますか?」
「いや、捜査本部が立ち上がれば南署も参加することになるだろうから、まずは一課が来てからだ。うちらはできることは全部やっておこう」
「了解」
城島は佐伯の指示を受け、早速刑事達を集めて任務付与を始めた。
「有田君」
佐伯は有田を呼びつけた。
「はい」