けろりと言ってくれる。私の人生を実の妹が創作として面白がってくれるのは、逆にありがたいかもしれない。

みらいの独特な感想を聞きながら、私はようやくシュークリームに手を伸ばした。

「あと、もう一つ報告があってね」

彼女は私と悪魔を交互に見てニヤニヤしている。

「あたしも彼氏ができました!」

「……おめでとう」

本当は「も」ではないのだが、この際突っ込むのはやめにしよう。

「お姉ちゃんが帰ってくるまで、ずっとナツメくんに彼の話を聞いてもらう感じになっちゃったんだけど」

「え?」

溢れんばかりの笑顔を見せるみらいに対し、悪魔は少々呆れたような表情をしている。この男にこんな反応をさせるとは、よっぽど幸せな惚気(のろけ)だったのだろう。

「結婚を前提にって近々ウチに連れてくのはもう決めてるからさ、その時はお姉ちゃんも顔出してよ」

「それ、私いる?」

「あたしはナツメくんにも来てほしいくらいだけど」

「ダメ! だったら私一人で行くよ」

実家に悪魔を連れていけるわけがない。

みらいは一瞬淋しげな表情を浮かべたが、すぐに頷いた。

「そうだね。巧巳(たくみ)くんもその方がいいって言うかもだし」

「……タクミくん?」

その名を聞いて、急に嫌な予感がした。確認してみたところ、彼女のケータイに保存された写真の男にはやはり見覚えがあった。

「橘くんじゃない」

「うん、そうだよ」

先程の謎が一つだけ解けた。何故みらいが私の同級生と会ったのか―。

「巧巳くん、お姉ちゃんと同級生なんだってね」

何でもないことのように言ってくれた。

脳内お花畑の妹が勘繰ることはないだろう。けれども橘巧巳は、間違いなく私の初めての恋人であり、あまり思い出したくない男であった。

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