序節 古事記の投げかける謎――古事記の秘める数合わせ
Ⅰ「10引く1は9」という数合わせ
Ⅰ− 2 景行天皇の系譜の段を読み下し文で掲げる。景行天皇の7人の妻にⅰからⅶまでの番号、最初の妻ⅰの5皇子に1から5までの番号、続く6人の妻の全子女のうち男子のみに⑴から⑽までの番号をそれぞれ付した
(妻ⅰの伊字に付く小文字の「上」は声注である。声注にも特殊な寓意が潜む。当節の主題を外れるのでここでは詳細は省くが、「上」は「宇閇」で、大友皇子=伊賀皇子を宇~鵜の姿の縊死へと上げて閇じる寓意を秘める記号である)。
此の天皇、ⅰ吉備臣等の祖、若建吉備津日子(わかたけきびつひこ)の女(むすめ)、名は針間之伊上那毗能大郎女(はりまのいなびのおほいらつめ)を娶りて、生める御子、1櫛角別王(くしつぬわけノみこ)。
次に2大碓命(おほうすノみこと)。次に3小碓(をうすノ)命、亦の名は倭男具那(やまとをぐなノ)命〈具那の二字、音を以ゐよ〉。次に4倭根子(やまとねこノ)命。次に5神櫛(かむくしノ)王〈五柱〉。
又ⅱ八尺入日子(やさかノいりひこノ)命の女、八坂之入日賣(やさかのいりひめノ)命を娶りて、生める御子、⑴若帶日子(わかたらしひこノ)命。次に⑵五百木之入日子(いほきのいりひこノ)命。次に⑶押別(おしわけノ)命。次に五百木之入日賣(いほきのいりひめノ)命。又ⅲ妾(みめ)の子、⑷豊戸別(とよとわけノ)王。
次に沼代郎女(ぬしろノいらつめ)。又ⅳ妾の子、沼名木郎女(ぬなきノいらつめ)。次に香余理比賣(かごよりひめノ)命。次に⑸若木之入日子(わかぎのいりひこノ)王。次に⑹吉備之兄日子(きびのえひこノ)王。次に高木比賣(たかぎひめノ)命。次に弟比賣(おとひめノ)命。
又ⅴ日向の美波迦斯毗賣(ひむかのみはかしびめ)を娶りて、生める御子、⑺豊國別(とよくにわけノ)王。又ⅵ伊那毗能大郎女(いなびのおほいらつめ)の弟(いろど)、伊那毗能若郎女(いなびのわかいらつめ)〈伊より下の四字、音を以ゐよ〉を娶りて、生める御子、⑻真若(まわかノ)王。次に⑼日子人之大兄(ひこひとのおほえノ)王。
又ⅶ倭建(やまとたけるノ)命の曽孫(ひひこ)、名は湏賣伊呂大中日子(すめいろおほなかツひこノ)王〈湏より呂までの四字、音を以ゐよ〉の女、訶具漏比賣(かぐろひめ)を娶りて、生める御子、⑽大枝(おほえノ)王。凡そ此の大帶日子(おほたらしひこノ)天皇(すめらみこと)の御子等、録(しる)せるは廿一王、入れ記さざるは五十九王、并びに八十王の中、若帶日子命と倭建命、亦(また)五百木之入日子命と、此の三王は、太子(ひつぎのみこ)の名を負ひき。(195九356~198三369)