第3章 
「地震予知」の絶望 ―後編―
またしても予知できなかった「3.11」

2.本音を爆発させた地震学者たち!

したがって、十分な観測網さえ設置すれば直前予知が可能である、というものである。

しかしながら、このパラダイムはとりわけ3.11の後、観測データによって肯定されるものではないということがはっきりと示された……。これは旧パラダイムに基づく国の政策の抜本的な改正を迫るものである……。

実用的予知制度は、現時点及び近い将来においても実現は不可能である。これらを踏まえ、大震法及びいわゆる東海地震の実用的予知制度は廃止されるべきである』(1)として明治以来130年間にわたって産・官・学の総力を挙げて取り組んで来た「地震予知」の手法とその可能性を否定

(リセット)することからの再出発を訴えたのであった。

② 京都大学防災研究所の深畑幸俊氏は『世紀の難問「地震予知」に挑む』の中で、

『「地震予知」を現代における世紀の難問と捉え、長期的視点で問題を考えることが重要であるとした。その「世紀の難問」の特徴は

• 問題の設定は中学生でも理解できる平易なものである一方、その解決は恐ろしく難しい。

• 面白い共通点として、専門家から見て怪しげな解決法が数多く提案される。

•問題解決に時間がかかる。等であり、物理学での永久機関の発明、化学では錬金術、癌の特効薬の開発、飛行機の発明などを挙げることができる。

これらはいずれもその解決に数百年ないしはそれ以上の時間を要した、まさに「世紀の難問」と呼ぶことができる。

現代における「世紀の難問」と言える「地震予知」については1880年の日本地震学会発足以来百数十年が経過しているが、地震予知の問題が実質的に解決するまでには、これからさらに100年、200年といった時間が必要なように思われる。

そもそも地震予知は世紀の難問であるが、問題が難しいからといって地震学者が手をこまねいて良いということには全くならない。

現代の地震学者のすべきことは、地震予知をすぐに実現することではなく、その実現に向かって観測データを着実に積み上げ、理論を少しずつではあっても進歩させていくことである。』(2)(太字は筆者)と訴えた。