第3章 
「地震予知」の絶望 ―後編―
またしても予知できなかった「3.11」

原子力発電所の炉心溶融事故が発生

一方、国会事故調(東京電力福島原子力発電所事故調査委員会)は2012年6月に国会に報告書を提出したが、その冒頭の「結論と提言」の中で『何度も事前に対策を立てるチャンスがあったことに鑑みれば、今回の事故は「自然災害」ではなくあきらかに「人災」である』(1)と断じた。

さらに、今回の原子力災害の主要因とされた、外部電源の喪失について、『福島第一原子力発電所への外部送電系統は東京電力新福島変電所から2ルート、予備ルートとして東北電力富岡変電所から66KV東電原子力線が用意されていた。

しかし地震動により新福島変電所からの送配電設備が損傷し全ての送電が停止した。東北電力の送電網からの予備ルートも、1号機配電盤に接続するケーブルの不具合のため受電ができず、外部電源を喪失してしまった。』(2)として、予備ルートの日常的なメンテナンスが不十分であったことが明るみとなった。(太字は筆者)

本事故の結果、『ヨウ素換算でチェルノブイリ原発事故の約6分の1に相当する900PBq(ペタベクレル)の放射性物質が放出された。』(3)

東日本大震災後の各界の反応:異口同音に「想定外であった」と!

•地震調査研究推進本部の地震調査委員会

「これらのすべての領域が連動して発生する地震は想定外であった。」との見解を発表(3月11日夜)

•中央防災会議

2011年9月、「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会」(座長=関西大学教授・河田惠昭)が報告書を公表。

「今回の津波が想定を上回る浸水域、津波高などであった事が被害の拡大につながったことも否めない。」

「過去に発生したと考えられる869年貞観地震等の大地震を考慮の外においてきたことは、十分に反省する必要がある」とし、「今後は地震・津波の想定を行うにあたっては、あらゆる可能性を考慮した最大クラスの巨大な地震・津波を検討していく」との方針を打ち出した。

•科学技術・学術審議会測地学分科会

2012年3月の「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画(2009年~ 2013年)の実施状況等のレビユーについて(報告)」の中で次のように総括している。

「2011年東北地方太平洋沖地震の発生により、巨大な津波が発生し、甚大な被害が発生した。この地震は我々の認識を超える現象であり、これまでの地震発生モデルの見直しを迫るものであった。」とし、想定外であったことが強調された。