2.本音を爆発させた地震学者たち!

日本の地震学は、阪神淡路大震災に続き東日本大震災でもその原因となった大地震の予知・予測には貢献できなかった。

のみならず、長期予測では次の宮城県沖地震はM7~8程度と予測されていたことから、当初巨大地震発生との認識が無く、これが被害の拡大につながったとの批判を受けることとなった。

東日本大震災の後、地震学会を中心として「地震の予知・予測」に関して反省の意味を込めて様々な議論が起こった。

特に、震災直後の2011年10月に静岡市で開催された「日本地震学会秋季大会」後の特別シンポジウム「地震学の今を問う」には会期延長の上、あいにくの雨にもかかわらず500 名近い会員が出席、特に社会との関わりを含めて今後の地震学について、忌憚のない熱い議論が一日中交わされた。

会議の後このシンポジウムでの発表内容に加え、さらなる意見を会員から募集し、意見集を刊行することとなった。

(公社)日本地震学会会長平原和朗氏は『この集録はシンポジウムの貴重な記録であると同時に、日本地震学会再生の第一歩となると考えている。』(2012年5月刊行「集録 地震学の今を問う―(公社)日本地震学会、東北地方太平洋沖地震対応臨時委員会報告」の「はじめに」)と記している。

「地震予知体制のリセットを!」、「地震予測では何も始まらない!」、「地震予知は世紀の難問である!」等の提言が相次ぎ、さながら日本の地震予知・予測の歴史がリセットされたかのようであった。

そこで、この集録『地震学の今を問う』等を通して、3.11 後、「日本の地震予知・予測」の考え方、方向がどのように変化したかを見ることとしたい。

以下、「集録 地震学の今を問う」の中からいくつか紹介したい。

① ロバート・ゲラー氏(東京大学大学院理学系研究科)は『防災対策と地震科学研究のありかた:リセットの時期』の中で、『3.11はM9.1の巨大地震であるにもかかわらず GPSなどあらゆる観測データを遡ってみても前もって識別可能な「前兆現象」は皆無であった……。

しかし以下の前提に基づくパラダイムが日本を支配してきたことは周知の事実である。すなわち、

•地震発生は(概ね)周期的であり、

• 大きな地震の発生前には識別可能な「前兆」現象が存在する。


(1)国会事故調「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会 報告書」2012年7月、12頁

(2)国会事故調、同上書、24、147頁

(3)国会事故調、同上書、37頁

【前回の記事を読む】予知できなかった3.11。「狭義の地震予知」が可能になるには、まだ100年以上かかる。

次回更新は10月14日(土)、8時の予定です。

 

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