「ご存じの通り、この十燈荘で殺人事件がありました。あなたが第一発見者だと聞いていますが、真実ですか?」
「その通りです」
堀田まひるは、地味な外見ながら明るく朗らかに話す中年女性だった。
「お名前とご年齢は?」
「堀田まひる、四十一歳です」
「最初に聞かせていただきたいのですが、昨夜から今朝まで、どこで何をしていましたか?」
アリバイの確認だと理解した堀田は、緊張しながら答える。
「昨夜は、夜にパーティーを開かれるお宅にお花を届けて……それが十八時前でした。その後は店に戻って店じまいをして、ここが自宅ですからそのまま夕食を取って寝ました。
朝は四時に起きて藤市の青果市場に行って仕入れをして、帰ってきたのが八時頃です。市場ではいつものお店で挨拶していますから、聞いてもらえれば私が来たことがわかるはずです」
「わかりました。ご協力ありがとうございます」
堀田まひるは、朝七時には十燈荘にいなかった。よって、七時のタイミングでチャットの会話が途切れている秋吉春樹を襲うことはできない。
【前回の記事を読む】長男が家族を殺した?いや単純な一家心中や不慮の事故ではない。猟奇的殺人をする理由は何なのか…
次回更新は10月11日(金)、21時の予定です。