アイアムハウス

昨夜の訪問先の名前、市場の店の名前を聞いた深瀬は、メモもせずに次の話題を持ち出した。

「あなたはこの店の店長ですか? いつから? 仕事はお一人で?」

深瀬の矢継ぎ早な質問に、堀田は少し押され気味に答えた。

「はい、私が店長です。三年前までは母と一緒にやっていたのですが、体を壊して入退院を繰り返すようになって……母が働けなくなったので、しばらく一人で店を切り盛りしていましたが、去年の四月から夏美さんにパートとしてきてもらうようになったんです。とても助かっていました」

「そして今日、あなたが、無断欠勤の夏美さんの遺体を発見したと」

「そうといえばそうですが、私が最初に見つけたのは、お風呂場の冬加ちゃんです。チャイムを鳴らしても誰も出なくて……押してみたら玄関のドアが開いていて、入ってみたら誰もいなくて、お風呂場に電気が点いているようだったので覗いてみました」

「なるほど」

深瀬は頷いたが、やはりメモを取る素振りは見せなかった。

「表札近くに血痕がついていましたが、それに気づいたときには通報しなかったのですか?」

「え、血痕があったんですか……それは気づきませんでした。警察に電話したのは、冬加ちゃんが見つかったときです。そのあと、他の皆さんはどうなのか心配になって、家の中を見て回りました。

書斎で旦那さんが見つかって……とても恐ろしい亡くなり方でした。その後、二階へ上ったら春樹くんを見つけて、まだ息があったので急いで救急車を呼びました」