アイアムハウス

お湯が沸き、堀田はコンロの火を消す。既に十二時十五分。お昼時で、長居は商売の邪魔だろうが深瀬はまったく意に介していなかった。

「それは何ですか?」

「ええと、掲示板とか、今だとSNSって言うんでしょうか? 十燈荘の住人だけが使えるネット上のコミュニティサイトです。家から出なくても、ここで話ができますし、そもそも自治会の連絡がそこでされるので、みんな見ているんです」

「そうですか。そのサイトは、私も見ることができるでしょうか?」

「いえ……私の端末からならお見せできますが、アクセスできるのは十燈荘に住んでいる人だけです」

「あまり聞かない話ですね。どういう仕組みでしょうか?」

「と言われても」

困惑した堀田が、新しい人物の名前を口にした。

「詳しいことは、管理会社の吉田さんに聞いてもらえませんか? 私じゃわかりません」

「管理会社というのは?」

「ここからもう少し下って脇道に入ると、十燈荘エステートって会社があるんです。小さいですが、ビルが建っていますよ。十燈荘でビルって珍しいからすぐわかります。そこの社長の吉田さんに色々聞けば良いんじゃないでしょうか」

「わかりました、ありがとうございます」

深瀬は軽く頭を下げて、話を切り替えた。