2.予知できなかった、兵庫県南部地震!

ブループリントから30年

1962年1月に公表された、いわゆる「ブループリント」(地震予知―現状とその推進計画)は、その最終章で「地震予知がいつ実用化するか、本計画のすべてが今日スタートすれば、10年後にはこの問に充分な信頼性をもって答えることができるであろう」と結んでいる。

これを受けて1965年にスタートした政府の「地震予知計画」。数次にわたる「研究計画」の成果として、兵庫県南部地震直前には従来型の地殻変動連続観測点は全国で177か所、GPSの連続観測点(詳細は後述)は全国に210か所(内、南関東・東海が110か所)設置された。

しかしながら、結果として当初の10年はおろか30年を経過したにも拘らず、これらの観測点が兵庫県南部地震の前兆現象を捉え、「地震警報」を出すことは無かったのであった。

「ブループリント」との決別!

1997年6月、測地学審議会地震火山部会は30年にわたる「地震予知計画」を総点検、「地震予知計画の実施状況等のレビューについて」(報告)としてこれを公表した。

このレビユーこそ「地殻の変動を連続観測して地震の前兆現象を把握すれば、地震の直前予知が可能となる」、との地震研究者の明治以来の定説に終止符を打ったと考えられる。日本における「地震予知」の歴史的転換点として、なぜ「前兆現象把握による直前予知」に終止符が打たれたのかをこの「レビュー」から「検証」したい。

前兆現象では、直前予知はできない!

『地震の発生時を精度良く予測するのに必須である、様々な前兆現象ついては、前震活動、異常地殻変動、地下水の水位異常や元素・イオン濃度異常、広域地震活動の活発化等が大地震の発生に先行して検出されている。

しかし、前兆とされるこうした現象は多くの場合S/N比〔信号(Signal)と雑音(Noise)の比 筆者注〕が低く、複雑多様性の中に何らかの系統性を見いだせるほどに信頼できるデータが蓄積していない』(1)として前兆現象把握による直前予知についてはその可能性を否定したのである。


(1) 測地学審議会地震火山部会「地震予知計画の実施状況等のレビューについて」(報告)1997年6月、39頁

【前回の記事を読む】世界的な地震予知ブーム。官学挙げての集中的な取り組みむなしく、阪神淡路大震災が発生。

次回更新は10月9日(水)、8時の予定です。

 

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