第2章
「地震予知」の絶望 ―前編― 予知できなかった! 兵庫県南部地震!
研究成果の評価が難しいから!
その上で『これまでの地震予知計画が「地震予知の実用化」を目標としたため、計画の立案や評価にあたっても地殻の異常変動を如何にして発見するかという視点が重視された。しかし、こうした視点では地震発生場に関する研究成果等を評価することは難しく、また、それを計画の立案に生かすことも難しい。
実際、これまでの地震予知計画においては、観測網の整備、発展とともに地震の発生場に関して多くの成果を上げたが、それらを「地震予知の実用化」という目標への到達度として評価することは行われなかった。』(1)という。
ここに「100年の地震予知の夢」に終止符が! ―到達度の評価が可能な目標を設定―
『前兆現象に基づく直前予測については、現象が複雑多岐でノイズが大きく信頼性のあるデータが十分蓄積していない。
地震予知の実現にとって前兆現象の検出とその実体の解明が重要であるが、もし今後とも前兆現象に依拠して経験的な「地震予知の実用化」を目指すならば、地震予知の健全な発展と成果の社会への適切な還元は望めない。(太字は筆者)
今後の地震予知計画においては、「地震予知の実用化」を将来の課題として掲げつつ、到達度の評価が可能な目標を設定して、それに向かって逐次的に計画を推進し、各時点での研究成果を社会に適切に還元していくことが必要である。』(2)とした。
そして、『今後の地震予知計画では、地震予知の実現に向けて、地殻全体の応力・歪状態を常時把握して地震の発生予測につなげる総合プロジェクトを発足させ、その過程で、「いつ」、「どこで」、「どの程度の規模」の3要素のそれぞれの予測誤差を小さくすることによって地震災害の軽減に寄与することを目指す』(3)としたが、「地殻全体の応力・歪状態」を「常時把握」することなど、非現実的な計画のようにも思われるのだが。
外部評価委員会のお墨付き!
以上の結論に対して理化学研究所理事長(当時)の有馬朗人氏等を構成員とする「外部評価委員会」は『「地震予知の実用化」という点に関しては達成されていない。30年前の学問的レベルから考えて致し方なかったことであるが、最初の見通しが甘かったのかもしれない。
「地震予知の実用化」を将来の課題として、現時点での重点を予測のための基盤調査観測の整備と予知の実現のための基礎的研究の充実とに移したのは正しいものと評価する。むしろそれは遅きに失した感がある』(4)とした。