「新ブループリント」の提案!

1997年6月の測地学審議会による「地震予知計画の実施状況等のレビュー」公表以来多くの地震研究者の議論が交わされた。とくに注目を集めたのが、東京大学理学部の濱野洋三氏を実質的な代表者とする「地震予知を推進する有志の会」(仮称)であった。

公開の議論の他メーリングリスト(参加者約170名)を通じて議論を重ねて、1998年春「新地震予知研究計画―21世紀に向けたサイエンスプラン―」(「新ブループリント」と言われた)を公表した。

この提言では、「日本列島の全域かつ長期の地殻変動に目を向け、その活動の推移を予測すること、その中で大地震の準備過程の最終段階にある場所を捉え、特定された震源域に対してリアルタイム集中監視と定量的な逐次予測・検証によって地震発生の予測精度を高めていく」(5)と提案。

この「新ブループリント」はその後、1998年8月の測地学審議会の「新たな観測研究計画(5か年)」建議の基礎となったのであった。

3.地震予知研究者の貴重な「生の声」!

京都大学防災研究所 住友則彦教授(当時)兵庫県南部地震の発生当時、京都大学防災研究所に在籍していた住友則彦教授(当時)が2000年に研究所を去るにあたっての講演で、地震発生前後の体験を赤裸々に語っている。

その要旨は『1995年に兵庫県南部地震を経験した。予知には失敗した。我々は30年以上にわたって近畿地方で予知のための観測研究を続けてきた。地震、地殻変動、電磁気、地球化学の諸観測から前兆を捉えることはできなかった。研究の方法に問題が無かったか、今見直しをすべきである。

犠牲者となった6,500人以上の命は、もし予知研究が間に合って居れば救えたかも知れないと思うと残念である。予知研究を担当してきた理学系の責任を思わざるを得ない気持であった。


(1) 測地学審議会地震火山部会「地震予知計画の実施状況等のレビューについて」(報告)1997年6月、41頁

(2) 測地学審議会地震火山部会、同上書、42頁

(3) 測地学審議会地震火山部会、同上書、5頁

(4) 測地学審議会地震火山部会、同上書、115頁

(5) 菊池正幸「緊急レポート 地震研究者有志による新地震予知研究計画づくり」『日本地震学会広報誌なゐふる』No.6 MAR.1998、2頁

【前回の記事を読む】日本における地震予知の歴史的転換点。「前兆現象把握による直前予知」はなぜ否定されたのか。

次回更新は10月10日(木)、8時の予定です。

 

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