「早速ですが、一之瀬さん、体温測りますね」と高崎は体温計を文子に渡した。文子は、パジャマの一番上のボタンを外し体温計を脇の下に挟んだ。温計の音が鳴り、文子は高崎に渡した。

「三十六度二分の平熱ですね。それでは診察室にお連れしますので、私のあとについてきてください」

文子と瑠璃は、高崎のあとについて行った。診察室は、昨日と同じだった。高崎は診察室の扉を叩き、「高瀬先生、一之瀬さんをお連れしました」と声をかけた。

「どうぞ、お入りください」

二人は口をそろえて、「先生、おはようございます。本日もよろしくお願いします」と言った。

文子が椅子に座り瑠璃は立ったままでいると、高崎がパイプ椅子をもってきて「こちらにおかけになってください」と勧めてくれた。

純二郎は、血液検査、尿検査、腹部超音波検査の結果を丹念に診て、血圧を測り、聴診器を文子の胸、腹部や背中にあて診察した。

「一之瀬さん、明日の朝九時半から超音波内視鏡検査をします。今晩八時以降はお水以外一切取らずに地下一階の内視鏡検査室に高崎看護師がご案内します。それと、胃カメラのときとの違いは、小さい針の付いたカメラで胃や十二指腸から超音波で膵臓、膵管付近を観察し病変があるようでしたら針を刺して検体を採取します。

その間、麻酔や鎮静剤が効いていますので、痛みはさほど感じないと思います。検査が終わったら検査室の奥にあるベッドで一時間ほど休養を取って貰い、具合がよさそうでしたら病室に戻って結構です。

検査後、もし体調に異変があるようでしたら、遠慮せずに高崎看護師を呼んでください。私がすぐに駆けつけますので、ご安心ください。早乙女さん、検査そのものは三十分程度です。前処置や検査後一時間ほど安静にしていただきますので、病室に戻るまで約二時間ほどかかります。その間、お待ちいただくことになります。診察と明日の検査についての説明は、これで終わりです。何かご質問ありますでしょうか」と純二郎は尋ねた。