第二章 善人面した悪人

「お母さん、私地下の食堂で昼食食べてきますが、何か買ってきましょうか?」

「そうね、真一さんがいらっしゃるなら、お林檎買ってきて貰おうかしら。三人で食べたくない?」

「地下の売店で、林檎売っているかな? もしなかったら、外に行って果物屋さん探すから……」

「瑠璃ったら、大げさなのよ。二個位でいいんだから……」

「わかりました。二個ね」

文子の昼食が配膳されたのを見届けて、瑠璃は地下の食堂に向かった。

昼食を食べ終えた瑠璃は、廊下に出て売店を探した。

売店には、さすがに林檎はなかった。

慌てて瑠璃は階段を速足で上がり、電波状態の良い一階ロビーに向かった。瑠璃はロビーの椅子に座り、ポケットからスマートフォンを取り出し、真一に電話した。なかなか繋がらず留守電にメッセージを吹き込んだ。

─もしもし、瑠璃です。病院にいらっしゃるとき、林檎二個買ってきてください。お願いします─

病室に戻った瑠璃は文子のベッドの横に行き、「お母さん、昼食どうだった?」と聞いた。

「瑠璃、贅沢言えないけど、正直に言うわね。今日は、薄味で美味しくなかったのよ」と囁いた。

「そうなの。そうそう林檎のことだけど、やっぱり売店に置いてなくて、真一さんに買ってきて貰うよう留守電に入れといたわ」

「あらあなた、そんなこと頼んでいいの。私、悪いことしたみたい」