そう言うと笹井はスマホの画面を深瀬に見せた。確かに同じ衣装が映っている。
「何故、秋吉冬加は自宅でこの服を着ていた?」
「それは、わかりません」
「そもそも家族四人を同時に殺すのは無理がある。一人殺しても、残り三人が逃げてしまう。そうなると、複数犯の可能性が高いが……睡眠薬という問題がある」
「夜中の犯行だったら、子ども達は寝ていた可能性もありますよね」
「しかし、そうなるとこのユニフォームの説明がつかない。気に入っていたとしても、十月だ。この薄着で寝ていたというのは不自然だと感じる」
深瀬は自分の髪を捻りながら、玄関から浴槽までのルートを何度か歩いて往復し、それから階段を見上げた。
「深瀬さん、最後は二階になります」
深瀬と笹井が廊下の左にある階段を上がると、そこには三つの部屋があった。一つは夫婦の寝室で、子どもの勉強部屋がそれぞれ一つ。特段おかしな部屋割りではない。
「扉がおかしい」
「えっ、そうですか? 僕にはわかりませんが、そうかも……?」
秋吉春樹の部屋の扉は少し歪んでいると深瀬は指摘する。
「暗いな」
昼間なのにそう思ったのは、二つある窓のカーテンがどちらも引かれていたからだ。薄暗い部屋の中は雑然としており、テレビ、机、シングルベッド、未開封のカップ麺、脱いだ靴下、教科書、漫画やゲームなどが散乱していた。カーテンレールからカーテンの一部が外れ、そこから光が差し込んでいる。